虚像(メディア)の砦
文庫本

中東で日本人が誘拐された。その情報をいち早く得たプライムテレビ放送の報道ディレクター・風見は、他局に先んじて放送しようと動き出すが、局内で予想外の抵抗を受ける。一方、バラエティ番組の敏腕プロデューサー・黒岩は、次第に視聴率に縛られ自分を見失っていた。そのPTBを厳しく見つめる目があった。警察庁から出向し、総務省で放送審査に携わる女性キャリア織田だ。テレビ局が抱える危うさが、次々と彼らの前で噴き出し始めた。
2005年夏に発表した『虚像(メディア)の砦』の文庫が、講談社文庫より刊行された。
私にとっては、『ハゲタカ』に続くデビュー第2作となる。
「メディアの問題に挑みたい」という想いがデビュー前からあり、その想いを形にしたのだが、想いの強さに振り回されて苦心惨憺した作品だった。
テレビが変質し、気がつくと我々は大なり小なりテレビに踊らされ始めた。そんな危機感と焦燥感を込めて、報道、バラエティ、そして企業としてのテレビ局の在り方に切り込んだのだが、果たしてその成果は如何。
文庫化に当たり、今回は、エピローグの最後の節を変えた。
通常なら改訂版と呼ぶのだろうが、実は今回の方が初稿段階のもので、いわばオリジナル版に戻したという形だ。
再読してみて、本作にはこちらの方が相応しいと感じての変更だったのだが、読者の方にはどう受け取ってもらえるか……。
〈真山仁ブログ「虎視眈々」より 2007年12月15日〉