ベイジン
文庫本
中国の威信を賭けた北京五輪の開幕直前――。開会式に併せて運転開始予定の世界最大規模の原子力発電所では、日本人技術顧問の田嶋が、若き中国共産党幹部・鄧(ドン)に拘束されていた。このままでは未曾有の大惨事になりかねない。最大の危機に田嶋はどう立ち向かうのか。世界の経済成長を牽引する大国となろうとしている中国の素顔と、原子力発電建設の現場から浮かび上がってくる“今そこにある危機”。それぞれの〝希望〟のために、どんな困難も乗り越えようとする男たちは、北京に光を届けられるのか?
今月9日、幻冬舎文庫から『ベイジン』の文庫版を刊行した。
中国を舞台に、原発問題にも切り込んだ作品だ。
単行本刊行当時(2008年)は、メディアなどでは、中国の真の姿とは何かという側面をクローズアップして戴いた記憶がある。
しかし、今回は原発問題についてより多くの関心を集めそうだ。
一因は、温暖化対策の切り札として原発への注目が集まり、原発産業に強い追い風が吹いているからだ。
奇しくも今月発売の月刊『文藝春秋』では、原発問題を取り上げた「原発商戦 ニッポンはなぜ負ける」というオピニオンも掲載して戴いた。
UAE、ベトナムと従来では考えられなかった新興国で始まった原発建設ラッシュに、原発先進国である日本が受注に失敗した。 その理由と私なりの主張を取り上げて戴いた。
「奇しくも」と記したのは、『ベイジン』の文庫化や、今年2月から『別冊文藝春秋』で始めた新連載小説『コラプティオ』でも、原発問題を取り上げたからではないからだ。
たまたま、月刊「文藝春秋」の編集者と会食をしていたときに、私が日本の原発のありかたをぼやいたことを覚えてくださっていてオピニオンは実現したものだからだ。
そして、今月は『別冊文藝春秋』の発売日でもある。
『コラプティオ』のテーマは、“官邸vs新聞社”なのだが、日本の原発産業をいかに活用するかについても、小説の大きな要素になっている。
気が付くと原発問題から離れられない状態になっている自分に驚きながらも、この重要なテーマをしっかりとお伝えしたいという気持ちを新たにした。
〈真山仁ブログ「虎視眈々」より 2010年4月18日〉